ザ・ニューリッチ Richstan

貧富の差が拡大しているアメリカの新しい富裕層は全く別の国"Richstan"の住民のようだと気づいた著者が新富裕層を取材して書いた本。 遅ればせながら読んでみたら、結構おもしろかった。

ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態

ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態

旧富裕層は代々の事業で富裕になったが(したがって代々富裕)、新富裕層の多くは中産階級の出身で一代で富裕になった。 富裕層も上・中・下の層に分かれていて、アメリカの貧富の差が拡大しているように、富裕層の上下の差も拡大している。 下層富裕層は、高学歴のプロフェッショナル、会社経営で富裕になり、中・上層は会社経営・起業・投資で富裕になった。 会社を創業し大きくしてIPOや売却で一気に富裕層になるケースが多い。 この背景には、世界の金余りの結果、アメリカにおカネが流れ込むことで「会社」という投資対象が高く売れたことがある。


新富裕層はお互いの見栄で(借金もして)大きな家を買い、執事を雇って家事を経営し、パーティー、寄付、クルーザー、自家用ジェット機に散財する。 新富裕層の子供はおカネがありすぎることで問題を抱える。
... 金持ちも大変そう。 家の中に使用人が何人もいたら落ち着かないじゃないか。
... またこのところの経済ショックで新富裕層のバランスシートも痛んだことでしょう。 でも、もともと中産階級出身だからまた勤勉にやり直せばいいだけかも。 ぱあーっと大金持ちになり、ぱあーっと使ってグローバル景気(雇用)を支え、ぱあーっとカネを失うというのがいかにもアメリカっぽいですね。


富裕層が見えの張り合いでバンバンおカネを使うので、中産階級もそれに引きづられて消費しすぎてしまう。
... とするならば、経済ショックの結果、米国民の過剰消費が減少し、その分(貯蓄に回る分)を米国政府が国債を発行して財政支出することで需給をバランスさせる。 経常赤字減少はドル高要因だが、国債発行による長期金利上昇を抑えるためにFRBが買いオペをするならばドル安要因。


下層富裕層は共和党支持が多いが、中上層富裕層は一生使いきれないほどの金があるので自分の財布よりも社会問題に関心があり民主党支持が多い。 新富裕層はたまたまの偶然で大成功したことを知る故に、稼いだ大金を社会の為に有効に使おうと考える人も多い。
... こういうおカネがリスクマネーとしてベンチャーにも回るのでしょう。 アメリカって懐が深い。