「貯蓄から消費」 へ

11月25日の日経 経済教室にて、クレディ・スイス証券白川浩道さんが「貯蓄を消費に回し成長の源泉に」と主張していた。

白川さんらの試算によれば、家計部門は過剰貯蓄状態であり、過剰貯蓄額は日本全体で百数十兆円に達し、高所得層がより多く過剰貯蓄しているとのこと。
家計部門の過剰貯蓄は個人消費が長く低迷してきたことと表裏一体で、余剰な家計貯蓄が取り崩されて個人消費が本格的に回復すれば、(景気が良くなり)その結果として税収増が財政収支の改善をもたらす。
「貯蓄から投資へ」で家計によるリスク資産投資を促進ことは次の意味で重要

  • 金融資本市場の価格メカニズムを向上させる
  • 企業年齢が若く多くのリスクマネーを必要とする企業の成長を促進する

ただし、日本経済の問題はリスクマネー不足だけではなく、潤沢な家計貯蓄が消費支出に回らない「有効需要不足」も見過ごせない。
家計貯蓄の最大の動機が将来不安への備えであるから、「貯蓄から消費へ」という政策目標を追求するためには、家計や個人の将来不安を可能な限り軽減することに重点を置くべき。 また、消費市場の拡大も必要。 消費余力の大きい高額所得層が支出を増やすよう、市場の活性化が重要。
以上が白川さんによる経済教室の要約。


私はここ数ヶ月こんなことを考えていました。


日本の場合、将来の見通しが?なので貯蓄に励む。 経済が成熟し投資機会を見出しづらい時代では、そうすると、消費不足のぶん供給能力が余ってしまい、貯蓄したくてもできなくなるまで経済が縮小してしまう。
余剰の供給能力を輸出に向けて外貨を稼いで、円に交換すると円が上昇して輸出できなくなるまで円高になり、結局は貯蓄できない程度まで経済が縮小する。 外貨を輸入の支払いにあてて消費しちゃえばいいが、消費意欲不足なのでダメ。 外貨資産を家計が保有すればいいが、リスクを嫌いダメ。 結局、政府が家計や企業部門の代わりに為替介入を通じて外貨建て資産を保有した。
政府が国債を発行して(間接的に)家計が貯蓄したおカネを引き取って、家計の消費の代わりに政府が使って(浪費して)あげた。 その結果が累積する財政赤字


家計部門がパッパと消費していれば、今、日本が抱える深刻な問題のいくつかは生じなかったかもしれない、こう思うと非常に不思議な奇妙な気分となります。


一方、識者にケチョンケチョンにけなされているアメリカは、高額所得者にガンガン消費させて世界の雇用を支え、不健全に見えて、実はとても偉いのではないか。 成熟した経済で不必要な供給能力を持たないことは、実は賢いことではないか。


そして、なぜ、日本ではデマンドサイドではなくサプライサイドの議論になりがちなのだろうか。