貯蓄か為替か

2月17日 日経 経済教室(一橋大 小川教授)より
グローバルインバランスをどう解消するか

賃金・物価が伸縮的な経済であれば、国内総生産GDP)は必ず完全雇用水準に落ち着き、これをもとに貯蓄の大きさが決まり、貯蓄投資ギャップから経常収支が決定される。 したがって、伸縮的な経済の下では、経常収支の不均衡を調整するのは為替ではなく、貯蓄の多寡になる。
一方、賃金・物価が硬直的な経済であれば、GDPは常に完全雇用水準で決まるわけではない。 すなわちこの状況下でも資本移動は比較的スムーズでまず為替相場が決まるので、為替相場は経常収支不均衡の調整手段となりうる。

アジア諸国の経常収支不均衡解消に関する実証分析によれば、中国おいては賃金や物価は伸縮的であり、貯蓄が経常収支の主要な決定要因であることが判明した。

一方、日本については、中国と異なり、GDPの大きさが貯蓄を通じて経常収支に影響を及ぼすとともに、為替が経常収支に相対的に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。 すなわち日本では、貯蓄を減少させることより為替相場によって経常収支を調整させる方の有効性が高い。

ここ数年の経常黒字(=貯蓄)は企業部門のデレバレッジ(負債の圧縮、信用の縮小)だったと見るならば、経常黒字期待が長期の円高期待を生み、為替レートの経路でデフレ圧力がかっていたということでしょうか。 そもそも、企業が負債を圧縮したくなる一つの理由は資産価格の下落と思いますが、デフレ圧力下では資産価格にも下落圧力がかかるから、資産を売りバランスシートを圧縮し負債を縮小したくなり .... と、悪いループから抜け出せない。
この経路のどこを遮断し、期待を反転させ、逆方向(良いループ)に回るようにするか、... ここが要点なのでしょう。

  • 大量のFB発行+日銀のFB引き受け(マネタリーベース増)+大量の為替介入 で円高期待を絶ち、金融緩和期待と共に、リスク資産価格に作用させる
  • マイナス金利 マネーの流通速度Upさせマネーサプライを増やすとともに、リスク資産に買いが入ることで、期待を反転させる
  • 米国消費の減少で輸出が減ることで貿易収支が赤字化し、米国金利の低下で所得収支が減少し、その結果、経常収支がトントン o r赤字となり、円高期待が消え、反転する。
  • 企業部門のデレバレッジも限度がある。 政府は赤字、家計はトントン、だから、いずれ経常収支はトントン or 赤字となり、期待が反転する。

以上は藤巻さんの主張・説明ですが、違うことを言っているようで、着目点はループ構造のように思えます。
余談ですが、ループ構造をちゃんと説明する論者って少ないなあ。