「『強い円』で消費市場復活」論

月刊Voice誌8月号には、円高論者でおなじみの三國陽夫氏が「"黒字激減"で自立する日本」を書いておられる。
例によって、輸出で稼いだ経常黒字はドルで国外に留め置かれるため国内にお金が回らない、という理論ですが、経常黒字は日本全体での貯蓄であり国内で投資や消費で使わなかった分だから逆じゃないか、と思うのですが...。 金のように供給量に制約があるハードカレンシー時代のモデルでペーパーマネー時代を見ているのでは?


下記は金本位制の時代にはそういえる話と思いますが...

海外からの資本の回帰そしてそれに伴う円高は、国内経済の拡大に本格的に貢献する。 比喩的にいうと、アメリカに預けていた日本の財布を取り戻すことであり、二つの効果を持つ。
第一は、日本経済に資本すなわち購買力が戻り、内需が拡大する。 第二には、同時に通貨を戻すことになる。 流通する円紙幣が増え、消費活動が拡大する、また銀行預金が増え、銀行の与信拡大がもたらされる。

海外からの資本の回帰とは、海外での貯蓄を取り崩す or 海外から借金することだから、実体経済では国内の貯蓄が減って消費や投資が増えるということであって、成熟経済では資本の回帰が経済の拡大を引き起こすというよりも、消費や投資がホットになれば貯蓄の取り崩しや借り入れが増えるという現象をあらわすに過ぎないのではないか。
金融資産市場に流入すればリスク資産価格上昇の資産効果実体経済を刺激するが、この経路がONになるためにはデフレ期待の消滅が必要であり、デフレ期待の消滅と円高は同時には起きないのでは...。
また、日本居住者が保有するドル資産を売り円に交換するということは、保有するドル預金を、海外居住者が保有する円預金と交換することだから、流通する円の量は変らないのではないだろうか。 金本位制の時代ならば、海外から金を持ち帰ればその金を基に銀行券を発行できるからマネタリーベースもマネーサプライも増えるハズ。 ただし、今は管理通貨(ペーパーマネー)の時代なので流通する円の量は日銀次第。