「論争・デフレを超える」 2002年の論争を振り返ると part 3

論争・デフレを超える―31人の提言 (中公新書ラクレ)

論争・デフレを超える―31人の提言 (中公新書ラクレ)

I.. デフレと生きるか、デフレと死すか
II. 円安は救世主となり得るか
III ニッポン社会の構造改革
IV. インフレターゲットは特効薬か
IV. 提言
以下は私の読書メモ。青文字は私のたわごと。


III ニッポン社会の構造改革


佐伯啓思
民間部門はやりたいことがいっぱいあるが、そのための資金がなかったり、規制があるため、経済活動が抑圧されている、というのはちょっと違う。消費も、今はある程度必要なモノが確保されており、それ以外は買っても買わなくてもよいモノになっている。だから、所得が下がると、消費者はその分カネを使わなくなる。
明らかに需要不足=生産能力の過剰であり、需要喚起が必要なことははっきりしている。
人口はピークを打ち、やがて減少に向かう。そうなると、今の過剰の問題は一層深刻化し、普通の意味での景気対策では解消できなくなるかもしれない。--- 人口の高齢化に伴い、いずれ労働力の過剰は解消するだろうし、貯蓄の過剰も解消するだろう。そうなればデフレは解消し、経常黒字が赤字に転じ、労働と資金が不足気味というインフレ気味の経済が出現するのではないだろうか、ひょっとしたら。


玄田有史
若者と中高年が限られた仕事の奪い合いをしている。特に、中高年がが既得権として雇用機会を維持するため、若者から仕事の機会を奪う状況が強まっている。自分が知らず知らずのうちに既得権者になていることは、皆、大なり小なりあるわけで、そういう既得権を行使しているかも知れないという意識は、どこかに持っていなければならないと思う。


黒田篤郎
中国がより安く世界中で売ることができるモノを、日本国内で営々と作り続けていく戦略は、企業にとっても、それを主産業としている国にとっても間違いであり、変えていくしかない。--- その通り。でも変れないねえ、相変わらず。円が強すぎる限り製造の現場は日本から出て行くから、マインド(アニマルスピリッツ)は冷え込み、人々は守りに入る...
日本全体の価格水準が、賃金を含めて下がっていくこともありえる。一方で、安価な輸入品が増えた結果として、全体的な生活コストが下がっているので、仮に賃金が下がっても絶対的な生活水準の切り下げにはならない可能性がある。 --- 資産価格が下がることが投資や消費に影響を与え、需給ギャップが広がる。輸出で需給ギャップを埋めようとするところで中国製とぶつかるとつらい。


J. K. ガルブレイス
人々が現在の幸福に満足しようとせず、一生懸命働き、より多くの財やサービスを購入するために金を得ようと望んでいること、そして、経済的な満足には終りが無いということを、当然と思い込んできた。しかし、経済の発展段階において先頭を走る日本は、こうした考えが真実でないことを示す最初の国になるだろう。
しゃにむに働き続けるより、仕事を離れてゆっくり暮らし、失業すら受け入れようではないか、と考えるようになるだろう。
--- 成熟した経済では、ちょっと働くだけで必要なモノ・サービスを生産できちゃうから、残りの時間はプラプラすればいいじゃん、という見方ですな。大いに魅力的!(私は怠け者なので)。流動的な労働市場とデフレじゃない経済が必要だろうなあ。


I.. デフレと生きるか、デフレと死すか
II. 円安は救世主となり得るか
III ニッポン社会の構造改革
IV. インフレターゲットは特効薬か
IV. 提言