日本経済の貯蓄過剰

9月30日の日経朝刊 経済教室 (by チャールズ・ホリオカ 阪大教授) より
01年〜07年
家計貯蓄は対GDP比で大幅減少、政府貯蓄もやや減少(毎年の赤字が増加)、企業貯蓄はGDP大幅増加。 97年, 98年の金融危機で懲りた日本企業は保守的になり負債を減らした。 (だから、日銀がマネタリーベースを増やしても、マネーサプライが増えなかったのだろう...)。
企業投資は増えたが、政府投資は減少し、家計部門の投資(住宅投資)も減少した。
家計貯蓄率が低下を続けた一方で、ISバランスのプラス幅が増大した理由は、公共投資の減少と企業貯蓄の増加(借金返済の増加)。


今後はどうなるか?。
人口高齢化で、家計貯蓄は引き続き減少するだろう。企業貯蓄がこれ以上増えるとは考えにくい。政府が努力しても政府貯蓄は減少するだろう。
景気が回復すれば、企業投資は増加、家計部門の住宅投資も増加するだろう。政府投資は現在の低水準よりも減少するとは考えにくい。
ISバランスのプラス幅は減少し、経常黒字も減少するだろう。01年以降の経常黒字の拡大は一時的な現象で、近く終了し、赤字に転ずる可能性も十分ある。


ここまでは私もわかるのだが、

経常収支黒字の縮小の一環として貿易収支黒字が縮小すれば、輸出が減少し、輸出産業が打撃を受ける。そうなれば、日本経済が再び不況に陥り、雇用状況が一段と悪化する恐れがある。なぜなら、日本のISバランスが縮小すると、日本が海外に提供する資本が減少し、外国の通貨に対する需要が減少し、円高が進み日本製品の価格競争力が弱まるからだ。

ここで私は混乱。

  • 経常黒字が縮小すれば、モノを輸出した代金のドルやユーロ、海外資産からの配当・金利のドルやユーロが減少するわけで、それらを円に換える際の円高圧力が緩和するので、円安要因。
  • 毎年の貯蓄が減少すると、リスク資金も減少する結果、経常黒字が海外に還流しづらくなり、その結果、円高がすすむかもしれない。
  • 国内の貯蓄が減少せざるを得ない状況でより多く消費しようとすると、海外に保有する資産を売りドル・ユーロを円に換えたいので、これは円高要因。
  • 国内の貯蓄が減少する中で、より多く投資するためには海外から資金をすることになるが、その際に(借り手or貸し手が)外貨を円に換えるので、これは円高要因。
  • 円需要が高まるときには、日銀はマネタリーベースを増やせるし、銀行は貸し出しを増やすことでマネーサプライを増やせる。マネーサプライ増は円安要因。

一概に円高に進むとは言い切れないのではないか、と思うのだが。 ホリオカ教授はどういう想定をしているのかなあ。