購買力平価、実質実効為替レート

「実質実効為替レートでみれば今は大した円高ではない」という議論に大いに違和感を感じていたところ、藤巻さんはプロパガンダ

本日は時間がないので書かないが「購買力平価」論からすると「円は割高ではない」として「円高問題は大したことがない」と主張する人がいるが、とんでもない。そういう人は、現場を知らない人だ。頭でっかちの人だ。次回「プロパガンダ」で触れることとする。

とのこと。
いい機会なので次のプロパガンダが出る前に実効実質為替レートの議論のマズイ点を自分なりに考えてみようと思う。

円が高くなったぶん(そしてデフレ圧力が加わった結果)、名目賃金や名目物価も下落すれば別に問題ないように見えるかも知れないが、

  • 賃金には下方硬直性があるため、全体の賃下げではなく弱い立場の人の失業が起きる。失業を間近に見る状況下では人々は生活防衛のため貯蓄しようと消費を減らす。これが景気を悪化させ、人々が貯蓄したくてもできない所得水準まで景気は冷え込む。それを経て均衡に向かうというのは余りにも酷ではないか。
  • 人々は名目値に影響される。名目賃金が下落すると貯蓄に励み消費を減らしてしまいがち。
  • 企業の会計は名目値に縛られる。原価率を保ってもデフレ下では利益の名目値が減少する。減収・減益という言葉は株主から嫌われる。互いにコストを削りあってより苦しくなったり、投資をケチるようになって生産性が上がりにくになったり。
  • 負債契約が重荷になる。債務はデフレに応じて減少したりしない。人々がおカネを借りないようになるとマネーサプライが縮小、経済活動が縮小する。
  • 円高&デフレ状況では、リスク資産価格は低下する。株式市場低迷時には投資は進まない。Exitに期待できなければベンチャー投資も進まないだろう。 イノベーションのタネや芽はあっても資金が投入されないから育たない。 歯を食いしばって頑張れば何とかなるというものじゃなかろう。
  • リスク資産価格が下落すると、企業や家計のバランスシートが悪化するから、人々は投資や消費を避ける。 借り入れもしづらくなる。

実質レートで見れば円高ではないと言われても、気休めにもならない...。