不況のメカニズム by 小野善康

藤巻さんの個人投資家へのアドバイスの一つは、「きちんと経済学を勉強しろ」、です。 しかし経済学の勉強して迷えるド素人が悩むことは教科書にはインフレとインフレ対策に関する説明は多いがデフレに関する説明がいまひとつ貧弱なことでした。そう悩んでいるときに見つけたこの本は非常に面白く理解を深めるのに役に立ちました。
私としては今年前半のNo.1の本です。



こんな前書き

1990年代初頭のバブル経済崩壊以来、日本は15年以上にも及ぶ長く苦しい不況に陥った。その間、不況をどう理解するかについて経済学者や政策担当者の間では意見が鋭く対立し、政策の方針も定まらぬまま構造改革財政出動かで揺れ動いた。その結果、最後にはアメリカを中心に力を持つ新古典派経済学の市場原理が力を得て、それに基づく構造改革が多くの支持を得るようになった。しかし、新古典派経済学は、そもそも不況の存在そのものを否定している。(中略)
本当に需要不足は無いのか。日本でこそ「理論的に導き出せないから現実にも需要不足はない」ではなく「不況があるのに理論的に導き出せないのは、理論が不完全だから」と考えるべきではないか。それまで新古典派経済学を学び、その研究を続けてきた著者にとって、これらの問題を考え直すのに、今回の平成不況は大変よい機会であった。...

ではじまる本書はケインズの一般理論のデフレの記述を今日の経済学の手法でモデル化しデフレのメカニズムを解き明かしていきます。この本のおかげでマクロ投資の一番重要なポイント

  • 実体経済とリスク資産価格の関係
  • リスク資産と貨幣の関係

がやっとわかってきました!!!。


経済が巡航速度ならば新古典派の理論にのっかってモダンポートフォリオ理論ベースの投資でOKですが、人間は時々非合理的になってバブルと不況・恐慌を引き起こすので、不況脱出からひょっとしたらバブルになっちゃうかもしれない時期をコケずに無事通過するための理論武装に新書のコンパクトな本ですがとーっても役に立ちそうです。


本書では新古典派ケインズの考え方を繰り返し繰り返し対比させ、両方のモデルの適用範囲を明らかにしていきます。以下は私のメモです。例によって私の勘違いがあるかもしれないので気をつけてください。


新古典派経済学の考え方
企業 : 投資を行い資本設備を蓄積し、労働を使い、モノやサービスを生産
家計 : 労働を供給し賃金を得る、いろいろな資産を保有し配当・利子・地代・キャピタルゲインを得る
物価、賃金、利子率を考慮して...
企業 : 利潤の合計現在価値を最大化する
家計 : 生涯予算の範囲で効用が最大になるよう現在から将来の消費を実行する
需給が一致するよう価格・賃金・利子率が決まる
(この前提ゆえ)売れ残りは生じないので総需要不足は発生しない。
... 需要サイドの原因で不況は生じえない
... 供給サイドの原因の不況はありえる (人々が一生懸命働いているのに貧乏という状況)


需要不足が発生するか? YES ケインズ
需要 = 消費 + 投資(将来のモノやサービスの生産のための設備を備蓄するためモノやサービスを使うこと)


投資が不足すると...
新古典派 : 資金が余るから利子が下落 → 投資が拡大する、貯蓄が不利になり消費を拡大させる。 財市場の 総需要 = 総生産 となるよう利子率が決まる。
ケインズ : 利子率は資産市場での需給 ((収益を生み出す)資産 vs. 流動性(貨幣))で決まる。 資産選択行動 → 貨幣やリスク資産の需給 → 利子率。 利子率が 総需要 = 総生産 を保障するわけではない。


投資は次の2つに依存し決まる

  • (1) 今の資金の借入コスト 利子率 --- 人々の資産選択行動(リスク資産 vs. 流動性)で決まる
  • (2) 将来の収益に関する予想


(1) 資金コストについて
新古典派 : 需要不足ならば物価は下がる。物価が下がれば貨幣の実質量は増え、貨幣をもっていてもしょうがなくなり、実質資金がリスク資産にあふれだし(貨幣需要が減ることで)利子率は下がるのではないか?
ケインズ流動性を確保したいという願望は強い → 貨幣を集めリスク資産を買わない。 リスク資産の需給を一致させるために(皆が貨幣を求めるゆえ)利子率が高どまりする。投資資金の実質コストは高いまま「流動性の罠
フリードマン : だからドンドンお札をすってマネーサプライが減少しないようにしろ
ジム・ロジャーズ : そんなことしていると人々がそれを織り込んで信用を膨張させデタラメなことをやり始めるぞ


(2) 収益予想について
ケインズ風評や気分で大幅に変動する。景気後退の初期段階では悲観が経済を覆うと投資は急速に控えられる。利子が下がっても気分は回復しない。
既に蓄積されている資本量 ... 資本の蓄積により有利な投資機会は減っていく。不況で総需要が減り売れないならば投資する意味は無い。十分な量の資本が蓄積された後では投資は消滅する。
だからイノベーションが無いと投資機会は消滅していく。イノベーションを続けられる国は景気も強いと言えるのでしょう。


ケインズの説をまとめると
流動性の魅力 → 利子の高止まり → 投資が抑えられる → 需要が減る → 所得が減る → 消費も減る
資産市場での利子率 : 貨幣 vs. リスク資産 名目利子率
投資を左右する利子率 : 実質利子率 = 名目利子率 - 物価上昇率


物価の固定性
物価が高止まりしていれば実質残高効果が作用せず消費は拡大しない → 総需要不足
物価変化率がゼロならば名目利子率の高止まりが実質利子率の高止まりとなる → 投資の上限 → 総需要不足
流動性の罠による名目利子率の下限 → 実質金利の下限 → 投資の上限 → 総需要不足


雇用理論
新古典派 : 実質賃金(名目賃金/物価水準)が下がると、働くのがアホくさくなり、労働供給が減る。市場メカニズムは需給を一致させるから、働きたい人は全て雇用される。実質賃金に応じて雇用量が決まる。
ケインズ : 物価が上昇して実質賃金が減っても離職はしないものだ。労働市場で調整できるのは名目賃金であり実質賃金っではない。総需要生産に必要な労働需要で実質賃金が決まる。ただし、労働市場で決まるのは貨幣賃金。


名目賃金が下がってもなぜ需要不足が解決されず、実質賃金が動かないか?
ケインズ : 不況期には名目賃金は下がるが実質賃金は下がらない。むしろ上昇する。
需要不足 → 雇用減 → 人が余る → 名目賃金は下がる
需要不足 → 雇用減 → 個々の労働生産性(限界生産力)は上昇する → 企業は売れば儲かる → シェアを取るため物価を下げる → 実質賃金の上昇


新古典派ロビンソン・クルーソー経済 生産 = 消費 + 将来の消費の準備(つまり投資)
ケインズ貯蓄と投資の意思決定が分離しているため両者の思惑が一致するとは限らない → 投資不足の可能性がある


新古典派セイの法則 生産した分需要が生まれる (需要不足も失業も生じない)
ケインズ消費(貯蓄)と投資は総供給(生産)とは独立に決まる
モノやサービスの合計価値 → 経済全体の所得 → 人々に分配 → 一部と消費し、残りを貯蓄(投資)
生産の一部しか消費しない --- 完全雇用するためには投資でモノやサービスを使う必要がある


新古典派 : 需要が下がれば物価が下がり、貨幣価値が上がる → 消費が増える → 完全雇用に達する。貯蓄量が投資量を決める(貯蓄したぶん投資できる)
ケインズ貯蓄したい量と投資したい量が一致するとは限らない。 実物投資の量までしか貯蓄できない --- 無理に貯蓄を増やそうとすると総需要が減ってしまう → 資本設備への投資が減る → 資本設備を裏づけとする富の蓄積もできなくなる → 所得が減り貯蓄できなくなる。
つまり、投資の量 → 所得が変化し、貯蓄と投資を一致させる。


新古典派 : 利子率の経路 --- 利子率が貯蓄と投資を一致させる
個人 現在と将来の消費の配分を考え貯蓄する
企業 投資の実施判断
ケインズ : 貨幣を通じた交換経済の特徴、所有と経営の分離、生産者と消費者の分離 → 貨幣という交換手段(流動性
労働投入や生産活動の要らない貨幣が欲望の対象になる。欲望が強すぎるとモノやサービスへの需要が減る。貨幣保有願望が投資に流れる資金を吸い込んで投資を抑制する。


消費性向を決める要因
新古典派 : 現在から将来にわたる予算 と 合理的構想
ケインズ : 金融準備金(モノやサービスの需要が生じない)、金融堅実主義 → 実体資本への投資に結びつかない
金融資産の蓄積と実物資産の蓄積は別物
人々が貯蓄することは消費を減らすことであり、実物投資を増やすことではない。経済が豊かになると実物投資よりも金融資産を増やすことを考えるので不況が起きやすくなる。
消費量の決定要因 ... ケインズの消費関数は大胆な仮定をしていますが、ケインズ自身は次のような要因を考えていた。

  • 所得
  • 将来の所得見通し
  • 現有資産の大きさ
  • 現在と将来のどちらの消費を重んじるか

不況の時は、将来の所得見通しが弱気になるので消費を控え貯蓄しようとし、リスク資産が目減りすると将来の消費のアテが減るので消費を控え貯蓄しようとし、デフレ時には将来の物価下落を期待して消費を先延ばしする、これが平成不況での私の体験でした。私の行動は新古典派のモデルよりもケインズのモデルに近かった。


新古典派 : 金融資産をためるとは、将来の特定の時点の特定の量の消費に直結している。将来時点での消費の増大 → 将来の消費拡大に対応する投資が生まれる。
新古典派のモデルは合理性を仮定しているが、ここまで人間は徹頭徹尾合理的じゃあないよなあ。


使うことを目的とせずためることだけを考えた貯蓄(貨幣をためること --- 流動性選好)のみが需要不足を起す。
ケインズ : 利子の上昇 → ますます貯蓄しようとして消費を減らす。資金コストが上昇するので投資が不利。
新古典派 : 利子率が常に完全雇用を実現するよう調整されるならば、貯蓄 → 投資 → モノやサービス つまり 流動性選好(手元にいくら貨幣を置きたいか) → 利子率を介して → 投資の量
note: クルーグマン流動性の罠の議論は、名目利子率には下限があるので完全雇用を達成する利子率を実現できない、つまり雇用不足状態(不況)となる、という話だったと記憶している。


投資によって見込める将来収益が実質利子率(=名目利子率-物価上昇率)を上回るならば投資は実行される。
長期期待 --- 投資の際に長期をどう見るか
長期期待の形成
ケインズ : (発達した株式市場がある場合)皆が将来についてどう思っているかを探ること
個人企業の時代 --- 投資とはやり直しができない行為、長期の収益を考える。
所有と経営の分離 --- 将来まで待たなくても将来収益を見込んだ利益を今手にできる(市場では株価に織り込まれてる)
株式市場の発達による投資の流動化の効果
(1) 貨幣にながれそうな人々の資産を資本購入に向かわせる → 新たな投資の促進
(2) 大衆心理の付和雷同
note: 新古典派が仮定するほど人々は合理的では無いときもある ... 例えば トカゲの脳と意地悪な市場
金融と審判の日~21世紀の穏やかな恐慌を生き延びるために (ウィザードブックシリーズ)


貯蓄の利子率 = 今消費するのをあきらめ将来消費するという我慢をさせるための実質利子率、報酬、時間選好率
新古典派 : 貯蓄と投資が一致するように利子率が決まる
貨幣量とは無関係で、人々の将来消費への欲求が高まり貯蓄が増えるならば、投資像 → 資本設備増 → 将来の消費増 ... 貨幣量は名目的な物価水準を与えるだけ (貨幣数量論)
ケインズ : 所有と経営が分離した資本主義では個人の貯蓄行動は今日使うのをやめるだけ。
貯蓄は「流動性選好」のためであり、投資は貯蓄の欲求とは別。
利子率とは貨幣の持つ流動性を一定期間手放すことへの報酬。流動性選好。
流動性を減らすためには、他の資産において収益が必要となる。
流動性の効用 「流動性プレミアム」 = 名目利子率 .... 貨幣量に依存する
貨幣保有量が増えれば流動性プレミアムが下がり、実物投資が有利になっていく。


物価変化率が自由に動くならば、完全雇用を満たしながらケインズの利子率(名目)と新古典派の利子率(実質)とを整合的に満たせる。物価の固定性が投資の伸びを阻む。


投資が続いて資本が十分に蓄積されたら新規投資はいずれ必要なくなる。その時...
ケインズ流動性保有が必要なので、人々の貯蓄意欲は残る。 消費しない → 総需要減 → 雇用減 → 所得減 → 貯蓄したくてもできなくなり、均衡する。
新古典派 : 投資機会が無いほど資本設備があるならば、貯蓄などしない。流動性選好で消費が減れば物価が下がり実質貨幣量が増え貯蓄しないで消費にまわる。


新古典派のキャッシュ・イン・アドバンス仮説

  • 一定時間の消費に応じた貨幣需要がある
  • 一定以上の貨幣を保有する意味は無い。流動性プレミアムはゼロ。
  • 一定を超えた部分はモノやサービスの購入に流れる → 経済は活発になる → 物価が上昇 → 貨幣保有の適正水準が上昇 → 貨幣保有量は適正水準になる


時間選好率 = (ケインズの)自己利子率 = 収益率 - 持ち越し費用 + 流動性プレミアム
資産ごとに自己利子率がある
各資産やモノやサービスの名目自己利子率が等しくなるよう市場メカニズムで需給が決まる。
各資産やモノやサービスの名目自己利子率 = 時間選好率 + 価格変化率 vs. 貨幣の流動性プレミアム
利子の多面性と市場メカニズムによる均質化に着目すると、消費関数を仮定せずに貯蓄決定と資産選択を統合した消費者行動を示すことができる。小野教授の着目点
ある財や資産の利子率が高ければ需要が増えてその利子率を引き下げる。それが他の財や資産の利子率と等しくなったところで需要増が止まり、需要が決まる。
いくら需要量が増えても他の資産に比べ緩慢にしか利子率が上がらない資産(貨幣) → 需要が集中し、全ての購買力を飲み込む


貨幣の資産としての特殊性

  • 中央銀行が管理、需要が増えても自然には増産できない、増産しても雇用は生まれない。
  • 他の実物資本や財では代用できない。貨幣需要が増えること自体が貨幣保有を有利にする(デフレになるから)。
  • 人々の貨幣保有の要求はなかなか減退しない。貨幣の実質量が増え流動性プレミアムが減り需要が他に向かうはずだが、なかなかそうならない。
  • 流動性プレミアム > 持ち越し費用

土地も貨幣に似た性質を持っている。


流動性選好 ... 他の資産のリスク(価格変動確率)を想像することが出来なくなる程の不安を解消するために、貨幣を持つ


平成不況期の政策論争
1. 貨幣供給量 → しかし金融緩和しても流動性プレミアムはなかなか減らない
2. インフレターゲット → しかし人々は信じない
3. 価格破壊・雇用流動化(貨幣の実質量を増やす) → しかしCPIを一度に大幅に下落させることはできない


自然利子率 投資と貯蓄を一致させ、財市場では 総需要 = 総供給 となる
note
総需要 = 消費 + 投資
総供給 = 所得 = 消費 + 貯蓄
新古典派完全雇用での利子率
ケインズ完全雇用が達成される保障は無い。所得が減少し、消費と貯蓄を押し下げ、貯蓄を過小な投資と一致させて均衡に達する。所得水準と自然利子率の組合せはいくらでもある。


消費について
ケインズ : 貨幣保有願望 → 流動性プレミアムが高止まりする流動性の罠 → 投資需要が無くなる、消費は消費関数で与えられたものと考えた。
新古典派 : 実質残高効果で消費が増えるはず。十分な量の生産設備が蓄積されていればそもそも投資需要は低い。


消費関数を仮定せずに物価が下落しても消費不足が続くことを説明できるか?
今、モノやサービスを買わずに購買力を貨幣の形で保有する → その間の分の流動性プレミアムは得られるが、購買力は物価上昇ぶん減る。つまり ...
消費を我慢する補償 = 時間選好率
消費する代わりに貨幣を保有することで失う価値 = 物価上昇率 + 時間選好率 = 貨幣で測った消費の利子率


人々は流動性プレミアムと(貨幣で測った)消費の利子率とを比較する。
流動性プレミアム > 消費の利子率 ならば 貨幣保有を増やし、消費を減らす。
流動性プレミアム < 消費の利子率 ならば 貨幣保有を減らし、消費を増やす。
流動性の罠が消費の限界を作り出す。

  • 流動性プレミアムが高止まりする
  • 消費に向かう購買力を吸収し消費を抑える
  • 実質残高効果を消滅させる


需要不足による失業がある場合
新古典派 : 貨幣賃金、物価 → 実質賃金 → 完全雇用 (価格調整で完全雇用に到る)
ケインズ : 消費性向、資本の限界効率、利子率 → 総需要 → 雇用 → 物価、貨幣賃金 → 実質賃金
貨幣賃金が下がる → 所得の低い層(労働者) 所得が減る、消費を抑える
貨幣賃金が下がる → 所得の高い層(資本家) (実質)所得が増える
貨幣賃金の低下 → 物価を引き下げる → 貨幣の実質量を増やす → 流動性プレミアムを低下させる
ただし、すぐには貨幣賃金は下がらない、無理に下げるとデフレを激化させる
中央銀行が名目貨幣量を増加させる → 貨幣の実質量を増やす → 流動性プレミアムを低下させる


新古典派 : 実物的側面(価格と分配の理論) と 貨幣的側面(名目変数の決定、貨幣数量説) が、全く分離
ケインズミクロ経済学(個々の経済主体の行動、資源の配分、静学的な経済構造の分析) と マクロ経済学(全体の算出量、雇用、動学的な分析)


ケインズ景気循環は主として資本から得られる将来の収益予想の変動によって起きる。
恐慌 投資の収益予想が急に悪化 → 不安 → 流動性選好 → 購買力が貨幣保有に向かう
好況が続き資本設備が蓄積 → 収益力が徐々に低下 → 将来に不安 → 投資が激減 → 総需要の低下 → 資本の収益性の悪化による株価の大幅な低下 → 資本効果をつうじて消費性向を急激に低下させる → 消費も減少
資本設備の平均耐用年数を過ぎると設備更新が必要になり投資が回復、人々は経済に対する確信を取り戻す。
消費の変動による景気循環 --- 経済危機の記憶 --- 世代の交代(15〜20年)


ケインズ民間投資は不安定な将来予想に依存して大きく変動 投資不足 → 総需要不足 → 労働力のムダ
新古典派 : 好況期の過剰投資が不況の原因
ケインズ : 本当の過剰投資とは好況期でも余るような資本。好況期にプラスであった投資の収益がマイナスになると過剰投資と思われ投資が抑制される。さらに、異常な実質高金利で投資が阻害される(恐慌期)。
流動性プレミアムを持ちうるもの

  • 貨幣
  • 銀行貨幣
  • 要求払い債務
  • 外国貨幣
  • 貴金属、宝石、土地


資本を更に増す余地が無くなったら?
需要拡大のためには --- 消費を促進する。 「節約という道徳は経済を富ませずに、逆に貧しくする」


変動相場制のもとでは、重商主義政策は近隣窮乏化政策ではなく自国窮乏化政策
輸出に努力 → 省力化 → 人あまり
輸出に努力 → 通貨高 → 輸出できなくなる
結局、失業が発生する。
固定相場制では金の流入でマネーサプライが増え景気が良くなる。変動相場制と固定相場制とでは経済への作用が異なることがおもしろい。昔の条件をベースにした常識には注意!
内需拡大政策 輸入が増え経常収支赤字圧力 → 通貨安 → 輸出増 → 総需要が増える


新古典派 : 総供給 = 総所得、全てを購入にまわせば 総供給 = 総需要、物価・貨幣賃金の調整で生産量の構成とそれぞれの需要量を一致させればよい。調整がうまくいっていれば売り残りや失業はありえない。
ケインズ : 総需要 → 生産に必要な雇用量、完全雇用を実現する雇用量である必然性はない。


新古典派 : 需要不足 → 物価低下 → 貨幣の実質量が増大 ...
貨幣の実質量が増大 → 貨幣を更に持ちたいとは思わなくなり、消費にまわる
貨幣の実質量が増大 → リスク資産に金が流れる → (資産インフレで)投資の金利が減り、投資も増える
ケインズ : 消費関数の仮定、実質残高効果を無視
投資は実質利子率(流動性の罠)と将来の収益予想(将来への不安)に依存する --- 新古典派と同じフレームワーク
ニューケインジアンのモデルとして新古典派のモデルの体系に組み込まれた。


長期不況を説明するのに決定的に重要なのは投資不足よりも消費不足 小野教授
新古典派 : 消費不足も起きない ... 貨幣の実質価値が増えれば消費も増える(貨幣数量説)


公共事業の意義 --- 需要の波及効果ではない (←根拠が無い)、打ち捨てられていた貴重な労働資源を少しでも役に立つモノやサービスの生産に向けること。(経済学の「効率」の議論)


流動性の罠 --- 人々の貨幣保有願望(流動性選好)
貨幣保有 vs. リスク資産 (実物投資) → 投資に影響、資産価格や利子率に影響
貨幣保有 vs. 消費 → 消費・投資が減る → 総需要が減る → 所得が減る
貨幣保有は雇用を生まない。


新古典派完全雇用の世界、生産能力 → 所得 → 消費 + 貯蓄 (=投資)
ケインズ : 投資不足に着目、流動性の罠 → 投資の限界 と 消費関数の仮定 → 所得と消費の限界
不況動学 : 消費不足に着目、流動性の罠 → 消費と投資の限界 → 総需要と所得の限界


流動性の便益はあらゆる資産がいろいろな程度で持っている。他の資産でも貨幣の一種として購買力を吸い込む可能性がある。資金は資産投資家の間を行き来するだけで生産設備などの実物投資にまわされない。資産価格だけが上昇する。


Note: 資産インフレが起きると、いずれ、例えば、株価が上がることで再取得価格が割安になり(トービンのq)実物投資が動き始める。


(1) 所得の分配
所得 = 消費 + 貯蓄
消費の利子率 = 時間選好率(我慢することで増やせる消費量) + 物価上昇率 = 我慢量 (名目値)
(2) 資産選択
貯蓄 = 資産の取得 = 貨幣 + 実物投資
貨幣 : 流動性プレミアム
実物投資 : 投資の名目収益率(名目値)
流動性プレミアムと投資の名目収益率が等しくなるよう分配される
流動性の罠があると、所得は貯蓄にながれ、更に、資産選択時に貨幣に流れる。
流動性選好はなかなか消えないので、消費や実物投資におカネがまわらない。
(1)と(2)の分配で総需要が決まるが、その水準が完全雇用生産量と両立する保証はない。


流動性プレミアム : 消費と比べた相対的な流動性選好の強さ、貨幣保有と消費の限界代替率
消費が増えると上昇する (これ以上消費するのはもったいないから金を残しておこうという気持ち)


消費の利子率 : 消費を先延ばしして被る不利益(我慢料) + インフレ
デフレ時にはマイナスになりえる。
総需要が大きいとインフレ傾向になるため、増大する。


経済均衡
消費の利子率 = 流動性プレミアム = 投資の名目収益率


景気変動は、モノやサービスの魅力(好況) と 貨幣の魅力(不況) の綱引きによって生まれる。
経済危機の連続は、貨幣への執着を生み、不況を長期化させる。
そうなると、人々の確信の変化で、不況脱出。
確信の変化のきっかけの例 世代交代 35年サイクル


需要不況時の政策
消費の利子率を下げる、デフレ緩和、公共事業による労働需要増(失業が減ればデフレ圧力は減る)、貨幣賃金と物価の下落不安を抑え消費を増やす
公共事業の効果
(1) 作り出すモノやサービスの価値
(2) 人余りを減らしデフレを緩和する