最新・経済地理学

2001年ごろ、シリコンバレー半導体設計をやっている連中は、「優秀なエンジニアが長時間労働することがこの仕事(ある設計工程)の本質だ」などと言い、台湾系は「台湾の方が人件費が安いから新竹にデザインセンターを作った、大陸の方が若くて優秀なヤツラをもっと安く雇えるから上海にもデザインセンターを作る」といい、インド系は同様なことをいいつつインドに会社を設立していた。 このとき、シリコンバレー-台湾-上海、シリコンバレー-インドというつながりで世界が回り始めた!と認識した。 これが私的 "The World is Flat"の最初の体験だった。

このあたりの事情を専門の研究者が調べまとめた本がこれ。 歴史や背景、今の課題を系統だって理解でき、私としては非常に面白かった。 ... そして悔しいような悲しいような。


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台湾、イスラエル、インド、中国の優秀な若者が米国の大学院に進学後、母国には職が無いゆえ米国で働いていたが、90年代に台湾・イスラエル人の帰国が始まり、2000年代にはインド・中国人の帰国が始まった。 その際に、シリコンバレーとの仕事のつながりを保ったまま、シリコンバレーのスタイルを持ち込んだ。 この帰国の動きはITバブル崩壊の不況と9.11以降の移民政策でいっそう強まった。

日本企業が負債の圧縮に忙しくリスクを取れず海外に背を向けて パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54) しているうちに、シリコンバレーの「試行錯誤戦略」が台湾やイスラエルに根付いた。 日本企業が苦手とする「変化」を武器にする企業がアメリカだけではなく台湾・イスラエルにも広がって、日本のエレクトロニクスはつらい。

日本では台湾のAcerは影が薄いが、Acerの存在・創業当時の理念が台湾のエレクトロニクス業界に強い影響を与えたのだそうだ。 ... 知らなかった。