デフレはなぜ怖いのか by 原田泰

デフレから脱出して本当の構造改革が進むことを期待していたら逆風が吹き始め、復習をかねて軽い気持ちで読み始めたら、わかりやすくていい本でした。

デフレはなぜ怖いのか (文春新書)

デフレはなぜ怖いのか (文春新書)


今回のナルホド!

貨幣数量理論では 物価をP、貨幣の流通速度をV、マネーサプライをM、モノ・サービスの供給量( = 実質GDP)をYとすると

  • P = V×M / Y

変化率に着目すると

  • ΔP = ΔV + ΔM - ΔY

Y(供給)は需要により増大するので、-ΔYの効果で需要増がすぐにΔPに作用するわけではない。
人々の期待インフレ率はVに作用し、インフレを予測するならば貨幣を早くモノに変えようとするのでVは大きくなり、デフレを予測するならば貨幣で価値を余裕しようとするのでVは小さくなる。
デフレになるとVが減少することでPが減少し、それが人々のデフレ期待を強化することで、Vが更に低下し、デフレから脱出しづらくなる。
なるほど、なるほど、貨幣の流通速度は重要!。

マネー(貨幣)は、交換手段であり、価値貯蔵手段であり、価値尺度であるが、マネタリーベースをBとすると

変化率に注目すると

信用乗数は、銀行が貸し出しを増やせば増大し、銀行以外の民間が現金を手元におかず預金すれば増大する。
金利が増大すれば金利の魅力で手元の現金が預金に回るが、デフレの結果の超低金利では金利の魅力が無い(ATMの手数料すら賄えない)ので預金が減ることで信用乗数は減少する。

ということは、景気が回復すれば、資金需要が回復することで金利が正常化し、マネタリーベースが一定でも信用乗数が増大することでマネーサプライが増大し、景気回復でデフレ期待が解消すれば貨幣の流通速度も増加し、デフレというトラップから脱出し、景気回復を伴いつつインフレに向かう。 マネーサプライ増(インフレ)は通貨安要因だから、円安も景気を後押しする。

良い金利上昇が起きれば、経済はみるみる回復する。*1

このあたりが、藤巻さんが台風なみの逆風にもかかわらず、強気のViewを変えない理由と勝手に解釈しています。

マネタリーベースはすでに十分に大きいから、デフレから脱出さえすれば経済は普通に回り始めるる。そのきっかけは
(1) 円を安くすること
(2) 資産価格上昇
ということでしょう。
政府が円安政策をとれば、グローバルマクロの投資・投機家は日本の景気回復を予想し直ちに不動産や株を買い、それが資産価格上昇を引き起こし、実体経済を押し上げる。 これが一番手っ取り早い。 円安政策をとらなくてもジャブジャブのおカネはジワジワと資産に向かいいずれは資産価格を押し上げて実体経済に作用する。 でも残念なことに今は逆風状態。 最悪のケースつまり政府の財政破綻(インフレ)では人々は不動産や株式や外国資産を求める。 途中の逆風を覚悟しつつも、どう転んでもいいようなポジションは藤巻さんならでは!と勝手に思い込む私。

*1:この部分を、金利を引き上げれば景気が良くなる!とするのはヘン。不自然。名目金利を引き上げることで実質金利も上昇するから、そういう状況では投資は進まないし、消費も先延ばし(我慢)しがち → そして貯蓄したくてもできない水準まで経済が縮小しちゃう。