パラダイス鎖国 --- 読み流すのはもったいない #4

勝利の方程式が明確な「果てしなき生産性向上戦略」を追求するのが日本の本流の「高く険しい道」ならば、「試行錯誤的」生き方は新しい産業をつくり日本経済を救うのにつながるのだからこっちだってすごーく価値があるハズ、と海部さんは試行錯誤的に生きることのできる人の位置を定め、「変人」たちのバランスの偏り・意見の対立・利害の対立を多様性で許容しちゃえという。そして、イノベーションには一人の大変人のほかに多数の「プチ変人」が要ることを指摘する。
「ぬるま湯」が日本にできるまでの「プチ変人」はどう生きるか? これに関しては海部さんも苦労している様子。
更に試行錯誤戦略をシステマティックにやるため、「雇用慣行の変化」と「会社は誰のものか」に踏み込む必要を指摘する。ここも本書の重要なポイント。
雇用慣行の変化とは雇用の流動化と労働市場の存在だが、これによって

  • 経済のリソースつまり「人」の再配置を効率化し、経済全体を効率化でき
  • 「人」が流動することで「知」も流動し、イノベーションを活性化し、ベンチャーの芽となり
  • 失敗しても拾う神がいるからプチ変人をベンチャーに供給でき
  • 大変人やプチ変人興したベンチャーが成長する際に必要な普通の人を供給でき
  • 人が流動的な社会では、大企業がベンチャー買収後、組み込みやすい
  • 企業がリソース(人材)を外部調達できるため、すべてを抱え込まずにすみ、効率が良くなる

という効果が生じる
ベンチャーベンチャー投資を活発にするためには、ベンチャーに投資しした資金を投資家が上場や買収で回収する仕組みが必要で、そのためには会社は株主のものという割り切った仕組みも要る
「試行錯誤」はそもそもハイリスクなものだから、大企業で人事部が割り振った「果てしなき生産性向上」指向かつリスク回避マインドの人がイノベーションをやるよりも、「試行錯誤」マインドをもった変人がベンチャーイノベーションを手がけ、成功したら大企業が相応のおカネで買いとるといういアイデアは経済全体で見ればは効率的かもしれないと私は思う。
このあたりはすぐに変わるわけではなく、「ぬるま湯沸かし」を続けているうちに臨界点に達し突然日本のコンセンサスとなりがらっと変わるのかもしれない。製造業の効率追求だけではやっていけず、イノベーション・ベースの経済が必要なことは明らかだからいつかは多様性を受け入れ変化しなくちゃいけないはず。海部さんとていつ?はわからないから、普通の人が個人レベルで双方向発信できるWeb2.0を利用し、気持ちをパラダイス鎖国から「脱・鎖国」しよう、軽やかに「開国しよう」と、結ぶ。


パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)


私も「ぬるま湯沸かし」で参加しよう。