「なぜグローバリゼーションで豊になれないのか」 by 北野一 Part 3

北野さんは、ガス爆発が起きたとき直接の原因は何かの火花かもしれないが真相原因はガス栓の締め忘れのハズだ、という。 日本のバブルの場合、直接の原因は日銀の引き締めの遅れかもしれないが、真相原因は企業の資本コストの認識にあった。


日本企業は、今でも内部留保の資本コストをゼロと考えているかもしれないが、以前は、株式を時価発行した場合、額面部分に対しては配当を資本コストと認識したが、差額(=時価-額面)部分を資本コストゼロと考えていた。 額面よりも時価のほうがはるかに高く、また内部留保をコストゼロと考えていたから、資本コストは非常に低いと認識され、低リターンのプロジェクトへの投資が行われた。

資本コストを0.5%と認識するならばPER 50倍の株購入はOKでしょう。 資本コスト10%を認識するならば、PER 50倍は買えなかった。

上場会社が株式時価発行したらいっぱいおカネがはいってきちゃったから、とりあえず土地や株でも買っておけー、といっているうちに土地・株の上昇が始まり、金融緩和で リスク資産の上昇率 > 金利 となると負債で過剰なリスクテイクする人がでてきて....、バブルになっちゃった。

逆に、今は企業は高い資本コストに直面しているためバブルにはなりづらい、北野さんは言う。


人々の認識の歪でバブルが起きてしまったわけだが、北野さんの策は、今度はグローバル投資家の認識*1と国内投資家の認識*2の差を積極的に利用せよということである。

  • 内部留保せずにどんどん配当しちゃえ
  • 資金が不足ならば負債で調達
  • レバレッジが上昇する過程で、株価が上昇し、グローバル投資家は喜んで日本株を売り、配当期待の日本人投資家が買い
  • 最終的には、企業は負債利用で資本コストを低下させ、かつ、より低いリターンで満足できる日本人投資家から資金調達することでも資本コストを低下させられる
  • 日本の潜在成長率に見合う資本コストとなることで、金融引き締め状態から脱出できる。


北野さんの指摘

  • アメリカ人ですら、80年代後半以降、株式市場で資金を調達ではなく返却している。 --- 知らなかった...。
  • 日本人の60歳以上の時間選好率は大きい。 一方、アメリカ人はだれもが自分は平均年齢よりも長生きすると思っているから時間選好率は小さくなる。 非合理なハズの毎月分配ファンドは、時間選好率が高ければ主観的には合理となるのかも。 あるいは「空気」の作用で合理性が見えないのかも。 --- 結局、北野さんは「日本人は合理的ではない」と言っているよう聞こえる...。


なぜグローバリゼーションで豊かになれないのか―企業と家計に、いま必要な金融力


事実A,Bがあって、ここが合理的とするならば、こっちが非合理で人々の認識にギャップがあるハズ。 このギャップが解消されるための条件やきっかけは...。 こう考えればいい。 勉強になります!。

*1:たとえば期待ROEは10%

*2:配当利回りが5%あれば長期金利にくらべ結構うれしい